「やらせ動物レスキュー動画」がひどすぎる!動物愛護を逆手にとった虐待とは
「劣悪な環境で飼育されている動物を、有志のレスキュー隊が助ける!」。
これは、最近になってYouTube上で見かけるようになったコンテンツテーマだ。
感動的であり拡散されやすいが、これが「やらせ」であるという指摘が相次いでいる。
今年、YouTubeが投稿される動画に関してのポリシーを一部変更した。
「暴力的で生々しいコンテンツに関するポリシー」にある「動物虐待」の欄に、「準備された危ない状況にわざと動物を置いて救助するコンテンツ」が追加されたのだ。
こうした堅苦しい言葉を通して読むとわかりにくいが、つまり「やらせの動物レスキュー動画が禁止された」ということである。
やらせ動物レスキュー動画が禁止に至ったということは、それが看過できないほど横行していたことをもまた示している。
この“やらせの動物レスキュー動画”とはどのようなものなのか、またどういった流れで禁止に至ったのかなどを解説していきたい。
まず、やらせ動物レスキューの動画とは何か。「危ない目に遭っている動物を助け出す」というのが骨子である。
海外で制作されたものが多いが、動物を助けるシンプルな内容であり、英語の字幕も簡単なものなので、使用言語を超えて拡散されているようだ。
「動物にとっての危険」は無数にあって、そこが各動画の腕の見せどころである。
動物が溺れている、けがをしている、高所から降りられなくなっている……など、マンガによくありそうなシチュエーションから、
ヘビに攻撃されそうになっている、流木に乗って川を流されている、飼い主に包丁でさばかれようとしている……といった劇的瞬間が用いられることもある。
ここに動画投稿者がさっそうと駆けつけて、動物を救助するのである。救助に至るまでの苦労も細かく描写されるのがお決まりのパターンである。
近隣住民への聞き込み調査、入手した情報を元にした捜索、場合によっては住居に乗り込んで飼い主との対決が勃発することもある。
「道を歩いていたら弱った子犬を偶然見つけた」でも、ペットを愛する人からしたら十分なのだが、動画制作者としては視聴数を稼ぐために
それ以上のドラマを盛り込みたくなるものだろう。また視聴者も、救助に至るまでの展開が緊迫するほどのめり込む。
動物を救助したあとは、投稿者による動物のケアが始まる。なでたり、ダニを取ったり、傷に薬を塗ったり、である。
視聴者は「こんなひどい状態になっているなんて、かわいそうに…」と思い、であるからこそなおさら「よかった…保護されて本当によかったね!」と思う。
視聴者にとって投稿者は優しく強いヒーローのごとく映り、投稿者は人気を伸ばしていく。
なお、やらせの動物レスキュー動画の場合は、そのケアで動画が終わることが多いようである。
普通なら保護したあとは、数日〜数カ月をかけて病院通いをしたり引き取り手探しをしたり、といった過程が省けないはずであるから、
救助後の後日談に関する描写がない動画はやらせの可能性が高い、とされている。
筆者もためしに炎上していたやらせの動画を見てみたが、無警戒に見たとしたらなるほど、これはコロッとだまされてもおかしくない代物であった。
ペットを愛する人にありがちな傾向かもしれないが、愛玩動物がつらい目に遭っているのを見ると脳内は心痛で120%になって、
「早くあの子を助けてあげて!」以外に考えられなくなってしまう。やらせレスキュー動画を支援してきた多数の人たちもおそらくこの状態に陥っていたと思われる。
しかし、そうした動画を視聴する際に冷静さを残している人たちもいて、「これは詐欺なのではないか」といった告発動画をポツポツと制作していった。
筆者が確認したところだと、国内では今年の春先頃から告発動画が拡散され始めたようである。告発される側の動画は何百万再生をも稼いでいて、
告発動画の再生回数は数千、よくて数万回といったところであったが、草の根運動が実を結んでYouTubeにポリシーを改定させるに至った。
告発動画では「どの点がやらせなのか」を詳細に解説していて、一度見ておくだけでやらせを見破る力はおそらく完全に身に付くと感じた。
ざっと挙げてみると、演技がひどい、真に動物の身を案じた行動をしていない(投稿者はカメラマンが追えるようにゆっくり走る)など、不自然な点が多い、
出演者と出演動物が使いまわされている、動物の習性を無視した状況が人為的に作り出されている……などである。
https://diamond.jp/articles/-/282546 https://news.yahoo.co.jp/articles/01c02070ebdc52299bdae333ee0e8ec535833373